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糖尿病って、どんな病気?

 


 

糖尿病とは    戻る
 すい臓で作られているインスリンというホルモンの作用不足によって起こる病気です。
 食物として取り入れられた栄養素の一つである糖は、腸から吸収されて全身をめぐり、エネルギーとなって使われています。何らかの原因によってインスリンがうまく働かなくなると、糖が利用されずに血の中にたまり、血糖値が上がります。
1.糖の流れ

2.糖尿病の種類
  インスリン依存型糖尿病とインスリン非依存型糖尿病
  遺伝因子と環境因子
  インスリン抵抗性とインスリン分泌不全

 

糖尿病の有病率と発症率    戻る

 

体にどんな変化が起こるのか    戻る
多くの場合は無症状です。(発病後10~20年の間)
      尿の量が増える。のどが渇き、水を多量に飲む。
      やたらとお腹がすいてよく食べる。
      体重が減る。疲れやすい。手足がしびれる。

高血糖が著しいと、次のような症状が出ます。


 

糖尿病の診断    戻る

 糖尿病が疑わしいとき、確実に診断をつけるには血液をとって血糖値がどのくらいかを調べます。
 普通、朝食前の血糖値は、健康な人では60~110mg/dlです。朝食前の血糖値が126mg/dl以上、あるいは随時血糖200mg/dlであればそれだけで糖尿病が非常に疑わしいということになります。

ヘモグロビンA1c(グリコヘモグロビン)
 約2ヶ月前から採血時までの血糖値を反映しています。
 正常値は4.1~5.8%です。

血糖値と尿糖の関係
 普通、血糖値が170mg/dlになると尿糖が陽性となります。
 糖尿病の初期は、空腹時血糖が120~140mg/dlですから、糖尿病であっても尿糖(-)となります。
 つまり、尿糖が(-)であっても糖尿病になっている人も多いのです。
      

血糖コントロール基準

血糖値(mg/dl) HbA1c(%)
  空腹時  食後2時間
優良 <100 120 5.8
<120 <170 5.8~6.5
<140 <200 6.6~7.9
不可 140以上 200以上 8.0以上

 

糖尿病の合併症    戻る
 なぜ血糖コントロールが必要なのか?
 高血糖を放置するとどうなるか?
 血糖コントロールにより合併症は予防可能か?
A..慢性合併症
1.目の病気(糖尿病性網膜症)
2.腎臓の病気(糖尿病性腎炎)
3.神経障害(手足のしびれ、足の潰瘍、眼瞼下垂)
4.動脈硬化症(心筋梗塞、脳卒中)

B.急性合併症
1.低血糖(糖尿病の治療中に時々起こる症状です)
 低血糖とは、一般には血糖値が60mg/dl以下の状態をいいます。
 普段の血糖値が高い場合は、もう少し高い血糖値(60~70mg/dl)でも症状が出ることがあります。
 インスリンの注射や糖尿病の飲み薬でインスリンの作用が効きすぎた場合に起こります。
2.感染症(肺炎・膀胱炎・皮膚の吹き出物・歯槽膿漏)
 感染症とは、細菌、カビ、ウイルスなどの微生物で起こる病気のことをいいます。
 糖尿病で血糖が高いと細菌を食べる白血球の働きが弱まっており、その上養分となる糖分は多く、細菌にとって住み心地が良い環境となっています。
 糖尿病の人は、皮膚、特に首の後ろから後頭部にかけておできができやすく、悪化しやすい状態です。
 ちょっとしたことと思わずに、ただちに医師に見てもらい、十分な治療を受けましょう。

・低血糖になりやすいとき
  ①食事の量が少なかったり、食事時間が遅れた時
  ②運動量が多すぎる時、空腹時やインスリン効果の強い時間帯に激しい運動を行った時
  ③インスリンの量が多すぎる時
  ④解熱剤、鎮痛剤などの他の薬剤やアルコール類を飲んだ時
・低血糖への対処の仕方
 食事前や夜中、運動後などに何らかの症状があったら、すぐ角砂糖小5個またはそれと同じくらいの砂糖を含む ジュースなどを飲んでください。普通15~20分で症状がおさまります。
 次の食事までに一時間以上あるなら、食品交換表・表-1から2単位捕食します。

 自分で砂糖が飲めない場合、意識がない場合は、周囲の手助けが必要です。
 低血糖については、自分で知っているだけでなく、万一の場合に備えて、家族や友達、同僚に知ってもらっておくことが大切です。外出時には砂糖ジュース、糖尿病手帳を携帯しましょう。

・シックデイ対策(糖尿病以外の急性疾患の日の対応)
 糖尿病になると、肺炎などの感染症にかかりやすいということはすでに説明しましたが、糖尿病の人が風邪や肺炎などの感染症にかかったり、胃炎や飲みすぎなどで急にモノが食べられなくなるといった糖尿病以外の病気を併発することをシックデイと呼んでいます。
 糖尿病の人の場合、シックデイには血糖コントロールが非常に難しくなります。。糖尿病を悪化させないためにも、特に注意深く対処する必要があります。

①食べ物を食べたり飲んだりできない時はすぐ病院へ連絡を。
②水分は1時間に100ml以上確保しましょう。
  できるだけ摂取しやすい形(おかゆ、麺類、果物)で、エネルギー・糖質を補給しましょう。
③熱をはかりましょう
④尿の量・尿糖を調べましょう。
⑤血糖をはかりましょう
⑥食事ができないからとインスリンを極端に減らしたり、中止してはいけません。
⑦吐き気や腹痛などほかの症状がないか観察しましょう。
⑧呼吸はどうか観察しましょう
⑨毎日の体重表をきちんとつけましょう。

 

動脈硬化とは    戻る
体のすみずみまで酸素や栄養素を運ぶ重要な役割を果たしているのが動脈です。この動脈が年齢とともに老化して血管が弾力性を失われて硬くなったり、血管壁にコレステロール等の脂質が沈着し、血管が狭くなり、血液の流れが滞る状態を、動脈硬化といいます。
               
糖尿病、高血圧症や高脂血症といった生活習慣病があると、動脈硬化は発症しやすくなります。動脈硬化は狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞などの脳血管障害や閉塞性動脈硬化症の病気の原因となります。

検査でわかる動脈硬化
 頸動脈エコー検査:簡便で視覚的に動脈硬化を診断します。
 ABI/PWV:動脈硬化の程度を数値化します。

PWV/ABI検査
 血管の硬さと狭窄を知ることで、
 閉塞性動脈硬化症(ASO)の早期発見
 診断・評価に役立ちます。

PWV(Pulse Wave Velocity):脈波伝播速度
  心臓の拍動(脈波)が血管を通じて手や足に
 届くまでの速度のことです。血管が硬くなると
 弾力性がなくなり、脈波が伝わる速度は速くな
 ります。数値が高いほど動脈硬化が進行してい
 ることを意味します。

ABI(Ankle Brachial Pressure Index):上腕と足首の血圧比
  足首と上腕の血圧を測定し、その比率を計算します。
 動脈硬化が進んでいない場合、足首血圧は上腕血圧より
 やや高くなります。
 しかし、足の動脈が脂質等で詰まったり、血流が悪くな
 ると足首血圧は上腕血圧より低くなります。
 こういった動脈の狭窄や閉塞は主に下肢の動脈に起きる
 ことが多いため、上腕と足首の血圧の比によって狭窄や
 閉塞の程度がわかります。

結果の見方
頸動脈エコー検査

  頸動脈エコーは、首の左右にある頸動脈に
 超音波をあてて、血管の中を見る検査です。

 頸動脈は動脈硬化の好発部位で、頸動脈を
 エコー(超音波)で見ることにより、全身の
 動脈硬化の程度が測定できます。


血管壁の観察:内中膜複合体厚(IMT)の厚さを計測
詰まり具合の観察:総頸動脈の血管腔を観察
プラークの観察:プラークの大きさ、形、表面、硬さなどを観察

 

糖尿病の治療    戻る
糖尿病治療の目的
 より健康な生活を送ること。
 代謝状態をできるだけ正常に近づける。
 合併症の予防


糖尿病治療の4本柱

①食事 食べ過ぎを無くし、栄養のバランスを考え、規則正しく食べ、よく噛んで豊かな食事にする
②運動 筋肉量を増やして活性化し、インスリンを効きやすくする
③薬物 ①②の生活療法で良好なコントロールが見られない場合に内服薬・インスリンを使用する
④ストレス管理 原因を取り除き、良いほうに考えを整理し、リラックスする

 糖尿病と診断されたらそれまでの自分自身の生活習慣について振り返ることが大切なことです。過食、肥満、運動不足、ストレスなどはすべて糖尿病発症の引き金になるものであり、前からすでに糖尿病がある人の場合には、悪化の誘因になるものです。
 生活習慣を改めることこそが治療の第一歩になります。

足の健康管理

① 温かい石鹸水で毎日よく洗いましょう。湯に足をつけっぱなしにしたり、強くこすったりしないようにしましょう。
② つめは、深爪をしないように、出来るだけハサミや爪切りを使わずに、ヤスリを丹念にかけましょう。
③ 傷がないか足をよく見る習慣をつけましょう。
④ 裸足で歩かないようにしましょう。
⑤ 靴ずれに注意し、履物を清潔にしましょう。
⑥ ウオノメ、タコは切ったり削ったりせず、ローションで湿り気を与え、タオルであかを落とす程度にします。
⑦ 水虫に注意しできるだけ早く治療します。

当院では「フットケア外来」を行い、患者の皆様の足の健康管理のお手伝いを致しております。

 

糖尿病の食事療法    戻る


なぜ食事療法が必要か?

 必要最小限のエネルギーを摂取することでインスリンの需要量をおさえ、その食生活を続けインスリンの効きをよくすることにある。同時に栄養素のバランスを適切に保つことが必要である。


食べる量の決め方

   標準体重1kgあたりのエネルギー量が目安にされています。
     標準体重=(身長m)×(身長m)×22

            軽労働 25~30/㎏
           中労働 31~35/㎏
           重労働 35~

食品交換表のしくみ
    1単位は80キロカロリー=20~30分歩けるエネルギー

  主な食品 例えば  
表1 穀物、いも ご飯一杯 2単位
表2 果物 りんご小1個 1単位
表3 魚、肉、卵
チーズ、大豆製品
アジ1尾
鶏卵1個
1単位
1単位
表4 牛乳、乳製品 牛乳1本 1.4単位
表5 油脂 油大さじ1杯 1単位
表6 野菜・海藻 ほうれんそう1把 1単位

 

アルコールについて    戻る

飲酒が糖尿病に良くない理由

   節制がなくなり、食事コントロールができなくなる
   食事をせずお酒だけ飲んだ場合には、低血糖を起こす恐れ

糖尿病患者でアルコールが許可される条件   

  ①血糖コントロールが良好
  ②重症の糖尿病合併症がない
  ③薬物治療を受けていない
  ④肝機能検査が正常
  ※症状や治療によって飲酒が許可される条件は異なります。
   必ず主治医にご相談ください。

上記すべてを満たす場合、アルコール1日2単位までは許可できる

     ビールなら・・・・・・・・500ml
     日本酒なら・・・・・・・・1合
     ウイスキーなら・・・・・60ml(ダブル)まで

    アルコールはご飯と交換できません!!

 

お菓子について    戻る
   砂糖20g = 1単位 = 血糖100mg/dl 上がる。
    まんじゅう1個 = 2単位 = 砂糖30g
    ケーキ  1個 = 4単位 = 砂糖60g

上手なお菓子の食べ方

   表2(果物)を我慢して、お菓子1単位を食後にゆっくり味わって食べましょう。

 

喫煙について    戻る
 糖尿病の人は基本的に禁煙が大事です。喫煙の害はニコチンだけでなく、煙に含まれるタール、一酸化炭素、炭酸ガスにもよるもので、肺がんをはじめとする様々なガンの発生率を高くしています。また、動脈硬化を促進すること、抹消の血流を悪くすること、不整脈をもたらすことも言われています。

 

運動療法    戻る
 すい臓で作られているインスリンというホルモンの作用不足によって起こる病気です。
 食物として取り入れられた栄養素の一つである糖は、腸から吸収されて全身をめぐり、エネルギーとなって使われています。何らかの原因によってインスリンがうまく働かなくなると、糖が利用されずに血の中にたまり、血糖値が上がります。
なぜ運動療法が必要か?

   ①血のめぐりが良くなり、体のすみずみまで酸素がいきわたる
   ②運動筋でのインスリン作用が増える
   ③血圧が下がる
   ④肥満の解消  
   ⑤ストレスの解消
   ⑥体力をつけ抵抗力を高める


どんな運動が良いか

運動にはいろいろな種類がありますが、まずは階段のかけ上がりや、急な坂道を避け、平らな道を歩いてみましょう。糖尿病の運動療法として経験的に進められているのは、1回20~30分の散歩を1日1~2回してみることです。

どのくらいの強さの運動を、いつどれくらい

 脈拍が100~120/分、軽く汗ばむ程度で食後1~2時間に15分以上を目安にしましょう。

安全な運動のために

    ①他人とおしゃべりしながら続けられる
    ②運動中、後に苦しさや痛みがない
    ③疲労がいつまでも残らない
    ④急に激しい運動をしない
    ⑤炎天下や長時間の運動の場合には水分補給をする
    ⑥寒冷時には保温に努める
    ⑦栄養や睡眠時間を十分にとる
    ⑧体調の悪いときは無理をしない
    ⑨低血糖の予防
    ⑩自分にあった靴を選びましょう。
    ⑪正しい位置に万歩計を取り付けましょう

 

薬物療法    戻る
糖尿病の内服薬

  1)薬の種類と効果
    ①腸での糖の分解・吸収を抑え、食後の血糖が急に上がるのを防ぐ薬
        食事直前に飲む
        おなら、お腹が張る
        低血糖が起こりえる
    ②すい臓に直接働いてインスリンを分泌させる薬 
        原則として食前に飲む
        低血糖が起こりえる
   
  2)服用上の注意
    ①飲み忘れ、下痢、食べられないときは低血糖を防ぐため服用しないようにしましょう。
    ②高血糖を続けていると次第に薬が効かなくなります。
      インスリンで血糖をよくしておくと、また薬が効くようになることがあります。
    ③食事・運動療法を守らない人、酒を飲む人は薬が効きにくくなります。
    ④自分の飲んでいる薬の種類、量、時間を覚えておきましょう。
インスリン注射療法

  ・インスリン注射が必要なとき
     重症の感染症にかかったとき、手術のとき、妊娠中
     インスリン依存型糖尿病、内服薬で良いコントロールができない
     インスリン非依存型でもインスリンの分泌が強く低下している場合